『闇の奥』の奥―コンラッド/植民地主義/アフリカの重荷



『闇の奥』の奥―コンラッド/植民地主義/アフリカの重荷
『闇の奥』の奥―コンラッド/植民地主義/アフリカの重荷

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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原文を読むしかないな.......

どれも絶賛のレヴューが続いているようです。私自身は、conradのthe end of darknessはまだ読んだことがありません。というよりも難しすぎて読み進むことができないのです。というわけで、しょせん私ができるのは本作品についての雑記にしか過ぎません。著者は「地獄の黙示録」の製作の背後の潜む謎を解き明かすことに成功しています。そしてそこからある一般的な命題を抽出しています。その命題のもとでは、アフリカで欧米が犯した罪業の重さと深さは、アウシュビッツや広島・長崎以上のものと結論づけられます。そしてアメリカの歴史は建国以来、帝国主義的侵略拡大の歴史と整理されることになります。その命題は拡大し、kiplingのwhite men's burdenが全文が提示され、西欧とアメリカの隠されたモティーフが完膚なきまでに弾劾されることになります。日本人はここまでの「傲慢さ」を持つことができたのか、私の限られた知識ではわかりせんが、この傲慢さに「詩」という形態を与えるほどの「デリカシーのなさ」はなかったと思いたいほどです。著者が掲げる支配・被支配の構図における日本の位置は微妙なものです。かろうじてその危険を避けた側面と現代での消極的なかかわりはその両面です。しかし日本の文化的な洗脳への戦いは今も続いていることは自明の理です。著者の分析というよりも主張は確かにある一面の本質を突いています。でもその主張は西欧を西欧たらしめている本質、つまり「闇の奥」へ向けられることはありません。いったい著者を突き動かしたのは、何なのでしょうか。あとがきで述べられている1968年の事件は示唆的です。1968年には著者があげるエンプラの入港だけではなく、著者の当時の勤務先である九州大学にファントム戦闘機が墜落してもいます。そして著者は旧満州の生まれという経歴です。
「白人の重荷」??

本書が語るのは「アングロサクソンに代表される白人の唖然とするほどの驕慢と欺瞞と偽善」です。作者はコッポラ監督の『地獄の黙示録』から切り込みます。映画の中で、コッポラは「ベトコンが同胞の大勢の子供達の腕を切り落とした」というエピソードを登場人物に語らせます。ベトナム人がベトナム人の腕を切り落としたと。この「白人には想像を絶する野蛮」こそが未開人・ベトナム人の強さだという訳です。
この「腕切り落とし事件」の真相を作者は追います。辿り着くのはコンゴ。100年前。先住民族の腕を次々と切り落としたは、ベルギー国王、レオポルド二世の軍隊でした(写真付き)。フィクションとはいえ、白人の残虐をベトナム人に負わせるコッポラ監督を作者は断じて許しません。
次に目が向けられるのは、『地獄の黙示録』の下敷きとなった古典の誉れ高いコンラッドの『闇の奥』です。さまざまな例証を元に、コンラッドの人種差別意識と彼の中に揺ぎ無く存在したイギリス植民地政策への賛美の念が炙り出され、且つ、この文学作品の欧米での受容の形に見え隠れするグロテスクが語られます。
作者は、アフリカ、キューバ、南アフリカ、フィリピン、ベトナムetc、と世界を巡り、「帝国主義の殺戮と収奪」と「その正当化」の歴史を語っていくのですが、半ばで、かの有名な桂冠詩人キプリングの詩が登場するのです。「白人の重荷」について謳い上げるあの詩が。「白人の重荷」とは何か。それは、未開人に文明の光をもたらすことであると。「未開人」の中には当然日本人も含まれます。それを私たちは忘れてはなりません。アフリカ大陸に襲い掛かった「白人という闇」は、戦前の日本人が対峙したものでもあり、これからも対峙し続けるものなのですから。
「ヨーロッパの心」への挑戦

もしヨーロッパ人の侵略がなかったらアフリカはどうなっていただろうか。これは無意味な質問ではない。現状を上回る惨状は考えられないからだ。彼らの視点は一貫して資源に向けられていた。それは人的資源(奴隷)に始まりゴムや貴金属、鉱産物の略取に及んでいる。忘れてならないことはこれは過去の歴史ではなく現在でもあることだ。市場主義経済というイデオロギーはこれらのすべてを現状において正当化する。かつては「文明の光」が市場経済の座にすわっていた。キリスト教の宣教や西洋の文物が未開の蛮地に文明をもたらすと広く信じられたのであった。そこには完璧に近い情報の遮断があった。(崩壊以前のソ連に招待された学者文人の帰国レポートがソ連礼賛に大きく傾いていたことを想起しよう。)
表題が示唆するように本書はコンラッドの『闇の奥』を被告の座に据えて議論を進める。コンラッドは暗黒大陸における白人の「暗黒の心」を広く世に知らせたのではなかったか。著者はコンラッドの同時代人であるE.D.モレルやロジャー・ケースメントの奮闘を紹介して、植民地主義ではなく、個人的な悪業の暴露に止まっているコンラッドの思想を糾弾する。この著者の試みは成功したであろうか。コンラッド作品を下敷きにしたフランシス・コッポラの不可解な映画『地獄の黙示録』の紹介に始まるコンラッド批判は本書の末尾に至ってようやく終結する。そこまで行かなければ著者が合わせて糾弾する「ヨーロッパの心」は打破できないという確信に導かれてのことであろう。オリエンタリズム批判で名高いエドワード・サイードは歴史的限界を指摘してコンラッドに対して同情的理解を表明している。
植民地主義システムと「文明」人の欺瞞

この「「闇の奥」の奥」を読んでいて読者が常に直面するのは、著者藤永氏の強い「嫌悪」です。
怒りとも言えるかもしれません。
しかしそれ以上に「嫌悪」という言葉がここでは適切に思われます。
何に対する嫌悪なのか?
私は「植民地主義システム」と「欺瞞」が、その嫌悪に対象だと感じました。

著者は繰り返し、「ヨーロッパというシステム」を糾弾します。
この「システム」とは、ヨーロッパが富を吸い上げ収奪し、アフリカを骨の髄までしゃぶりつくす「植民地主義」という近代の構造です。
ベルギーの君主・レオポルド2世のコンゴ支配の歴史を追うことで、著者はその実態を読者に伝えます。

しかしそれだけならば、この本は『闇の奥』を下敷きにする必要もない、単なる歴史書となるでしょう。
藤永氏が書こうとするのは歴史ではなく思想です。
『闇の奥』でコンラッドがアフリカ及び植民地主義を描いたストーリーの内容と表現手法、
そして『闇の奥』に対するヨーロッパの、そしてアフリカの人々の評価の軌跡を追うことで、
植民地主義の正当化、隠蔽というあらゆる欺瞞をあぶり出します。
レオポルド2世によるコンゴ支配を批判する一方で大英帝国による植民地主義を支持した同時代の多くの知識人の欺瞞。
ヨーロッパの「文明」人が「暗黒」大陸アフリカで堕落(=「アフリカ化」)し、原始の野蛮状態に回帰するというモチーフの伝統。
アチェベのコンラッドに対する「べらぼうな人種差別主義者」発言を必死で否定し、偉大なる英国文学古典としての地位を『闇の奥』に占めさせ続けようとした知識人。
これらに共通するのは、他者を見下すことで自らの正当性を確保しようとする姿勢です。

300年以上にわたる収奪の歴史を無視して、現代のアフリカの窮状を安易に「アフリカ=未開・野蛮」という図式で捉えたがる無知と傲慢に、私たちは自覚的であるべきでしょう。
読んでいて

腹が立つ程、凄惨な事実が示されています。

ベトコンが腕を切り取った事件はジジェクが何処かで書いていた様に思いますが、
確かに著者の言う通り、それとこれを意図的に混用したとしたらコッポラは最悪だと思います。

ナチに匹敵するジェノサイドが「「闇の奥」の奥」であった。
知らないのは、それが「くろ」く「まずし」い人達対象だったから、とすることは許されません。
知りましょう。著者の強い伝える意志に敬意を表します。




三交社
闇の奥
アメリカ・インディアン悲史 (朝日選書 21)
解読「地獄の黙示録」 (文春文庫)
闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)
Heart of Darkness (Norton Critical Editions)




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